さよならの黄昏

日課のようだった夕立がいつのまにか無くなって、帰宅の電車内から見える夕焼けは、透明感を増していた。
ムッとする暑さで実感はないが、もう秋なんだろう。

夏は終わった。
これから全てが眠りに向かう。
そう思うと、心なしか乗客の居眠り率が高い気がする。
《例年より三週間早い冬の到来》
《冬眠に備える必携グッズ》
《春離婚を防ぐ冬眠のポイント》
中吊りの見出しにも冬眠の記事が増えてきた。

——淋しい。

毎年のことながら、冬眠が近づくと淋しくて仕方がなくなる。
温もりが欲しくて、誰でもいいから触れ合いたくて、人目を憚らず叫び回りそうになる。

窓に映る私は無表情だ。
美しい黄昏の空が子守唄を歌いはじめている。

(了)

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