食すれど – 狐火の唄 –

ここは櫻乃郷、竜の墓場。
死にかけの竜が墜ちてくる。
女狐が、小さな家に住んでいる。
怪我した猟師と、住んでいる。

「竜が堕ちると、そなたはなぜ泣くのだ」
「わかりません…悲しいわけではないのです、縁もゆかりもない竜ですもの」

女狐の涙は、青い炎となって竜の身体を焼く。
焼かれた竜を女狐は食べる。
彼女はそれで、生きていた。

「ただ…」
「ただ、なんだね?」
「私も…生きねばならぬのです、それだけです」

女狐は、そっと顔を背けて立ち上がった。

「お夕飯にしましょうか。韮と卵のお粥を召し上がりませ」
「ああ」

怪我の具合もよい。
明日は久々に狩りへ出よう。
猟師はそう決めて、かまどへ向かう彼女を見つめた。

(了)

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