あなたとわたしをつなぐ本 1作目を終えて

『あなたとわたしをつなぐ本』とは
2019年春にアイディアが生まれた、【三冊だけ製本し、一人の方のみに頒布する】という企画でした。

三冊、とは、
1・読み手である『あなた』の分
2・書き手の『わたし』の分
3・国会図書館へ寄贈の分
の三冊であり、これ以外の頒布は、このシリーズにおいてはこれから先も、ありません。

この企画の始まりは、よくあるこんな問いからでした。
《なぜ物語を書くのか》

わたしはいつも、
・自分のため
・よくわからない事象の形を掘り出して自分を納得させるため
と答えています。
ですから、書いているときに読み手の顔や反応を想像する、といったことが全くなかった。

もちろん、文章作法としての読み手は想定しています。
わたしはだいたい、掌編以外の物語を提供・公開する前には、下読みをお願いしています。
そのときに、「読みにくいところはないか」「意味のわかりにくい表現や構成はないか」という視点で意見をもらいます。
そこでは、【一般的な読者】を想定しています。
ユニークな【読者像】を考えてはいません。

そのほかに、いくつかの掌編をWEB公開したときに感想をいただいて喜んだり、数回の頒布会参加で、自作を購入してくださる方と交流したりなどはありましたが、それは「わたしのためだけに作った本に対しての反応」への喜びや反省だったわけです。

この企画は、そんな『わたし』が、どこかに居るとも居ないとも知れない『あなた』へ届ける本を作ること、を目的としています。

書きながら、『あなた』に渡すことを想いました。
表紙の紙を選びながら、『あなた』の手触りを考えました。
ページをめくりながら、『あなた』の視線をなぞりました。
他の作り手さんが多数の読者に向けて当然のようにやっているであろうことを、わたしは、『あなたひとりへ意識』せずにはできない性質なのだとわかりました。

物語だけは、全てWEB公開しました。
物語に興味をもって、この本を手元に置きたい、と思った方に買っていただけたら良い、という気持ちからでした。

そしてこの本は、頒布当日、わたしの目の前で、タイトル表記も無い表紙に見入るようにして手に取り、めくり、お買い上げいただいた『あなた』につながったのです。
『あなた』が本を読んでどんな感想をもったかはわかりません。
でも、この本を手にした『あなた』が『あなた』でした。
それは、腹の中で十月育てた子と対面したときに似ていました。
『あなた』が『あなた』だったんですね、と、じんわりした感動がありました。

これで、『あなたとわたしをつなぐ本』の一作目は終わりです。
WEB公開は終了し、三冊目は国会図書館へ……と思ったら。

私の下調べが足りなかったのですが、基本的に国会図書館の納本制度は、初版100冊以上または、15部以上の頒布実績があることが条件として挙げられています。(https://www.ndl.go.jp/jp/collect/deposit/qa05.html)

当初の予定で一冊を寄贈しようと思ったのは、
・製本の技術に自信がなく、予備としてもう一冊作りたい
・せっかく作ったならどこかへ置きたい
・あなたとわたし以外の第三者機関に置くことによって、この本があった証拠を残したい
という理由からだったのですが、
製作と頒布を終えたいま、予備以外の理由はあまり重要だとは思えなくなったので、次回からは、
・納本できるレベルに製本できていたら、どこかへ納本するかもしれない
という程度に留めたいと思います。
簡単に言うと、そん時考えよう!ってことです。

来年も作ります。
今度は、どんな『あなた』につながるのか、どんな『わたし』を見つけるのか。
粛々と、このシリーズが続いていけばいいなと思っています。

最後に、
ツイッターでのリツイートやいいねをくださった方々、また、興味を持ってカタログや宣伝を見に来てくださった皆様、ブースにお立ち寄りいただいた皆様、ほんとうに嬉しかったです。
ありがとうございました。

2020.2.28 追記

3冊目の居処が決まりました。

《ゆふいん文学の森》さま (http://rcas.jp/)にて、碧雲荘本棚に置いていただくことになりました。

太宰治が居留、執筆していた杉並のアパートを移築した、素敵なお宿です。

すぐにというわけにはいかないけれど、必ず伺いたいと思っています。

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