いのりうた #Twitter300字SS お題:祈り

 繁華街のビジョンに流れる歌声。十六歳の《みちる》はいま、十数年ぶりに現れた歌姫だった。有名ボカロPと組んで出した新曲は老若男女が知る曲となり、テレビでもSNSでも目にしない日はない。

 寂れた街に、一歳になる赤ん坊がいる。養護施設で、沢山の愛情を受け、育てられている。母親の名は誰も知らない。時々、父親の仕事の部下だという男が訪れる以外、赤ん坊に会いに来る者はいない。

 《みちる》の歌は、この世界に落とされたいのちへの賛歌だった。少女といってよい彼女が歌うそんな歌が、なぜか人々の心を打つ。人々は不思議がったが、それは彼女が歌姫であるから、そんな理由で納得した。彼女は笑顔の寂しげな、歌姫だった。

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