僕の誕生日に

2017-05-01

去年の今日、恋人に振られた。 三年前の今日、名古屋に飛行機が落ちた。 四年前の今日、父が死んだ。 八年前の今日、何処かの国の原子力発電所が燃えた。 十五年前の今日、家から100メートルのところに小学校ができた。 二十年前(続きを読む)


2017-05-01

見渡すかぎり、赤い砂が続いている。 写真で見た火星の表面のようにその土はからからに乾いて、ところどころ石がある。 小さな窪みに足をとられながら私は歩いていた。 かなりの距離を来たはずなのだが、不思議と疲れは感(続きを読む)


凪の旅路

2017-05-01

ちょうど、こんな空でした。 *  私はこのひとと一緒に繁華街を歩きまわっていた。 今日は珍しく北風は止んでいたけれど、暗い雲がどんよりと空を覆っていた。 この時間になると町中のネオンや明かりが反射して、空は明るかった。 (続きを読む)


不本意な覚醒

2017-05-01

ヒュウウウウ、パアァン シュルルル、カーン また隣の公園で花火か…俺は目覚めて窓を開けた。 「こら!今何時だと思ってるんだ!!」 ヒュウウウウ、ドカァン シュルルル、ズウゥン ガガガガガガガガガ ギリリ、ギリリ、ガタンガ(続きを読む)


僕のおじいちゃん

2017-05-01

ぼくはそっと部屋のドアノブに手をかけた。 チアリはぼくの背中をそっと押しながら、 「お母さんに叱られるわよ」 と言った。 「かまうもんか。おじいちゃんがこの部屋で何してるのか、今日こそつきとめてやるんだ」 「へえ、ずいぶ(続きを読む)


ライフ・イン・ザ・ホワイトコート

2017-05-01

「逃げたぞ!探せ!!」 私が居た洞窟の方で声がしたので、急いで牢獄へ向かう。 この30年の人生の中で使ったこともない筋肉を使っているんだろうなあ、という、その場に似つかわしくないぼんやりとした思考を、白衣…というほど既に(続きを読む)


Show must go on

2017-05-01

「落ちるぞッ!!」 相棒の声に、ハッと我に返る。 ブランコを掴み損ねた手は空を掴む。 向こう側に待っていた相棒に 「ごめ……」 声にならない声を投げながら、ゆっくりと身体は落下していった。 硬いネットにバウンドして、体勢(続きを読む)


2 ー マリア

2017-05-01

その運命の日、あたしは屋台村からみんなと反対方向へ逃げてから、誰よりも早く教会の裏口をくぐったの。 教会なんておせっかいなところ、ほんとは行きたくなかった(ママは敬虔なクリスチャンだったけれど、あたしはごめんだわ)。 で(続きを読む)


1 ー ラウル

2017-05-01

その頃、オレの生きる街ではしょっちゅう、大人たちが喧嘩をしていた。 例えばバスを待つ列。 例えば屋台のテーブル。 最初は、並び順だの肩がぶつかっただのオレにもわかるような因縁つけに始まって、そのうち「グォチンジェ(国慶節(続きを読む)


セント・ウァレンティヌスからの祝福

2017-05-01

小学校の正門は、「関係者以外立入禁止」と、ルビのふった看板がつけられている。 コウジは鍵のかかったそこを、器用によじ上る。 「入って平気?」 「だって、おれ『かんけいしゃ』だよ?」 「まあ……そっか」 コウジのあとに続い(続きを読む)