贄の仔育(こそだて)

2017-05-01

或る山深い峡谷に、春の一ヶ月だけ、陽のあたる谷があった。一ヶ月、芽吹き花咲くうちにも桜が最も優美なので、『櫻乃郷』と呼ばれていた。深く険しい山の中、そこに踏み入る人間は道に迷った猟師だけ。麓の村では、古くからの言い伝えに(続きを読む)