夜を掬う —宵闇の、溢れて朝[序章]—

2019-06-24

ここは東の最果て。切り立った断崖の遥か下に、白い波が現れては消える。この高さだけをみても、大昔、身投げの名所だったという話は理解できる。ましてや、満月の夜ならばその遺体は人魚に弔われるのだとか、波間に顔を出す海竜の餌食に(続きを読む)


ハレノヒ(白のブルース)

2019-01-20

今日は旧世界でいうところの大晦日。 昼から降り始めた雪が積もり、客足は例年より少なかった。 今年最後にメラクを指名した客は、竜人への偏見厳しい老いた浮浪者であった。 世界が『こう』なってしまったのは奴等の所為だとか、キメ(続きを読む)


いつかの夜

2018-08-03

僕に帰る場所などないことを知っていて、君は訊ねたんだ。 「いつまでここに居るの?」 「ずっとさ」 「ずっと……?」 そう言うと彼は、ケタケタと笑い転げた。 彼は僕のクローンだから、僕がずっとここに居ると同じ顔が二人で暮ら(続きを読む)