添いとげる理由

「ねえ、約束覚えてる?」
妻が言った。
「……ああ、覚えてるよ」
「若かったわ」
「後悔、してるのか?」
「……愛してるわ」
妻は目を伏せた。
「僕だって愛してるさ、だからこの家を買った、50年もローン組んで」
彼女は首を横に振った。
「顔をあげてごらん」
涙をいっぱいに溜めて、こちらを睨んだ。
「約束は守る、誰にも言わないよ。君は、父親から解放されたかっただけだ。もう居ない、あの木の下に埋まってる」
妻は泣き崩れた。
「ごめんなさい……あなたを巻き込んで」
「大丈夫、今までも気づかれなかったし、これからも気づかれないさ」

夫婦の秘密は、どこの家庭にもある。
覗いてみるといい。
どこの家の庭にも、死体のひとつやふたつ。

(了)

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