いつかの夜

僕に帰る場所などないことを知っていて、君は訊ねたんだ。
「いつまでここに居るの?」
「ずっとさ」
「ずっと……?」
そう言うと彼は、ケタケタと笑い転げた。
彼は僕のクローンだから、僕がずっとここに居ると同じ顔が二人で暮らすことになる。
「別にいいじゃないか」
僕が少しムッとして言うと、彼は僕の顔を覗き込んだ。
「悪いなんて言ってないよ、君に出会えたんだから……さあ、何をして遊ぼうか」
「話をしたいな。君の好きなものは何だい?」
「青い木の実。風の強い夜。冬の温かいスープ。……ねえ、帰るなんて言わないでね」
彼の肩に自分の肩を寄せる。
「言わないよ」
「よかった」
僕らは一晩じゅう、自分の好きなものについて語り合った。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。