不本意な覚醒

ヒュウウウウ、パアァン
シュルルル、カーン

また隣の公園で花火か…俺は目覚めて窓を開けた。
「こら!今何時だと思ってるんだ!!」

ヒュウウウウ、ドカァン
シュルルル、ズウゥン
ガガガガガガガガガ
ギリリ、ギリリ、ガタンガタン

戦車が、歩兵が、火花を散らしている。
そこに広がっているのは、戦場だった。

「……?」

俺は窓を閉めた。

「ええと、今何時だっけ?」

時計を見る。3時。
磨りガラス越しに見える外は、閃光が飛び交っているものの暗く、それはまだ夜だということを示している。
寝ぼけているのだろう、と考えたのは当然の反応だ。昨日の工場夜勤が明けて帰宅してから、かれこれ18時間は寝ていたのだ。

「寝よう」

ヒュウウウウ、ドカァン
シュルルル、カーン、ドオオォン

「……眠れねえしこれはもう……」

布団に潜り、耳を塞いだ。

「寝ないと。明日早番ルーチンだし」

ピンポン!とインターホンが鳴った。
無視を決め込む。
ピンポン…ピンポンピンポンピンポン
「衛生兵!!衛生兵!!負傷者ノ手当テヲ早ク!!!」
玄関の外、インターホンから叫ぶような声が聞こえる。
「あああもう!!」

俺は枕の横のティッシュボックスを引っ掴むと、玄関に向かってどすどすと歩き、ちょっと立ち止まって棚から救急箱を持つとドアを開けた。

「もう誰!?負傷者どこ?!?!」
「オ休ミノトコロ申シ訳アリマセン、ワタクシハ第18大隊ブロックB−4、マーク・ロジ…」
「ああはいはい、早く見せて」
「ハイ、オソレイリマス」

抱き下ろされた兵士はブロンドの若い男で、胸に銃弾で開けられたであろう穴が、赤く染まっていた。
俺は救急箱から出した脱脂綿にマキロンを染み込ませて、胸の穴に当てた。
染みるのか、負傷した兵士は呻いた。

「ええー…これ以上どうしたらいいのかなあ…」

連れてきた兵士は負傷した兵士に寄り添いながら、リュー、死ぬな!リュー!!と声を掛けている。

俺の手は血で汚れたマキロンを持っていた。
それはなすすべなく現れた戦場そのものだった。

「これは……現実だ……」

受け入れざるを得なかった。

静かな夜は、もう来ない。

(終)(お題:静かな夜中 制限時間:30分)

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