農耕貴族 ヴァンパイア鈴木さん

視望山の麓で野菜作りに精を出す、ヴァンパイアの鈴木さん。
幻界から日本へ移住し、人の生気を吸うことをやめ、農業を始めて8年になる。

産地直売の野菜は、食べると元気が出ると評判だ。
「野菜づくりのコツ? 我は夜にしか畑に出ぬ。夜のうちに水やりをし、芽掻きをするのだ。それ以外に他の農家諸兄となんら変わることはない」

長くウェーブのかかった黒髪。タオルを頭に巻き、土を耕す。
「土の改良はずいぶんと試行錯誤した。野菜に試されているように感じたものだよ、『おぬしに我らを食べる資格があるか』と」
畑に咲いた菜の花を一本折り取り、うっとりと匂いを嗅ぐような仕草。
すると、みずみずしい黄色の花は、たちまち枯れた。

(終)

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