とめどなく。投稿日:2018-03-03 |
早くしないと、電車が来てしまう。
ねえさま、とわたしは言って、前を歩く制服の腕をつかんだ。
長い髪が私の手をくすぐった。
「ねえさまは、わたしが純血のエルフでなくても……愛してくれたの?」
ねえさまは振り向いて、少し驚いたように、そして少し微笑んで、口を開いた。
そのとき。
『3番ホーム、特急が通過します。ご注意ください』
アナウンスとほぼ同時に、永遠のように長いクラクションの音。
がたんがたん、がたんがたん。
つややかな唇が、ただ、動いていた。
聞こえない、と言えばよかった。
でも。
わかってしまった。
「……わたしは、ねえさまの人形です」
うなずいて、目を伏せた。
(終)