よくある光景

食卓越しの二人の顔は、渋かった。
「父さんは反対だ。人間界なんて、そんな野蛮で危険な!」
それを制するように、母は私へ訊いた。
「どうしても、行きたいのね」
私は頷く。
「海の生活が嫌いなわけじゃないの、でも、ずっと陸で暮らしてみたいって思ってた…」
「お前…!!」
ガタン、と椅子が倒れた。
「お父さん、カヌエの好きにさせてあげましょう!この子も悩んでたのよ…!!」
私はうなだれた。
「色々調べたよ、今ね、人間界では『海女』という職業の後継者を探しているの。大事にしてくれそうなの、だから、大丈夫…」
長い沈黙が続く。
「…仕方がない、族長のところへ移住の手続きに行こう」

こうして、私は、新しい生活に一歩踏み出したのだ。

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