【感想と覚書】FAR:LoneSails(ネタバレあり)

あらたな人生の船出、と言う。
大抵は結婚式で使われる言い回しだ。

結婚式でその言葉は、
「今までは一人、これからは二人」
という文脈で使われる。
そこには、人は生まれた時から船に乗っている、という前提がある。
幼い頃には親の船に同乗し、その後は独立して自分の船で旅している、ということになっているのだろう。
このゲームでは、親の船から離れ、ひとり旅立たなければならなくなった小さき者が主人公だ。

(以降ネタバレあります)

このゲームに、理解可能な言語はほぼ出てこない。
主人公も喋らない。
画面は右へスクロールしていく。
主人公は、〈歩く〉〈ジャンプ〉〈ものを持つ/放す〉の三種類しか行動できない。

最初のシーンで、主人公はとある男性の墓の前にいる。
チュートリアルとして、そこから離れる指示がある。
スクロールしていくと、主人公の家がある。
主人公の家だ、とわかるのは、屋根裏部屋に主人公と同じ赤ずきんの写真が飾られているからだ。

そして先の墓の写真が、この家の主、つまり主人公の父親であろうことがわかる。
この家でこのゲームのおおかたのルールを学び、外へ出る。

トレーラーハウスのようなものがある。
中へ入ると、ENERGYと書かれたタンク、小さな箱、ベッドや機器類がある。
小さな箱を燃料としてこの車を動かすことで、ゲームは進行する。

周囲は彩度が低く、荒れ果てている。
壊れた乗り物、砂に沈みかけた建造物、海があった跡のような入り江。
人の気配はない。

進行は親切だ。
ゲームのお約束に疎い私でもわかるぐらいに、次のヒントやサインがでる。
つまり、ギミックは旅の必然であり、目的ではないということなのだろう。

燃料を足すと、車のような《船》は動く。
風が吹いている時に帆をあげると、燃料を使わずに進むことができることを知る。
なんのために設置されているか不明だった水が出るホースや、青い炎が出るバーナーも、そのうち、それが必要になる事故が起きてくる。
《船》を改修しながら、旅は続く。
どこが終着地かもわからないまま。

時おり、建造物に突き当たり、動けなくなる。
解除は簡単だ。
ボタンが目視できるので、ジャンプでそれを押して拓ける新たな動きに合わせて《船》を進めるだけ。
ただ、後半は構造物の全体が見えないために、探索が必要になってくる。
やはり行動は〈歩く〉〈ジャンプ〉〈ものを持つ/放す〉の三種類だけなので、どこで何に対してそれを使うかさえわかれば通過することができる。
そして、解除できて《船》が走り出す時の安堵感。
この孤独な世界で生きていくのも悪くない、と思えてくる。

そこで現れるのがラジオ塔だ。

主人公は塔へ登り、ボタンの上でジャンプすることでアンテナの向きが変わることを知る。
アンテナを回転させると、音楽が聞こえる位置がある。
私のような深夜ラジオ世代には懐かしい、チューニングだ。
遠くのラジオ局を必死に探って、やっと聞こえた時の感動。
そして聞こえてくるのは女性ボーカル、スタンダードジャズ風の曲だ。
拾ったラジオで、車の中でもしばらくそれが聞ける。
なんとなく鼻歌でも歌いたい気分でクルージングする。

いくつもの構造物を突破しながらも、ひたすら走るだけのシーンがある。
燃料を継ぎ足し、風向きによって帆をあげたりしながら、
「この旅の終わりはどうやって迎えるんだろう」
などと考える。
背景は、山だったり、巨大タンカーだったり、バッファローの群れる沼地だったりする。
しかし、生きている人間の痕跡は見当たらない。
そうこうするうち、比較的無傷な居住地が見えてくる。
ラジオは電波をとらえ、意味のわからない言語をくりかえし流す。
が、やはり住民は見当たらない。

やがて、車が入れない工場に行き止まる。

「We Build Our Future」
そうか、よくある話だな、と思う。
古今東西の創話で、人類の繁栄を望みながら破滅を呼び寄せたというのはよくある話で。

先の写真の看板に描かれた、多脚タンカー様の構造物は、ラスト近くで登場する。
主人公は ”それと知らず” に乗り込んで、動かすことに成功するのだ。

走り回り、燃料を焚べ、出火を抑え、がしゃん、がしゃん、と動き出す巨大多脚タンカー。
充実感もそのままに、《船》はその外へと。
再び旅に出る。

そろそろエンディングだろう。
どんなところへ、どんな形で終着するのか、しないのか。
ハッピーエンドかバッドエンドか。
ワクワクと不安を抱えながら、淡々と燃料を焚べて帆をあげる。
すると、突然の激しい揺れ。
火山が噴火したのだ。

え、え、と思う間に、火山弾が飛んでくる。
煙が追ってきて包まれる。
ENERGYタンクからも燃料釜からも帆からも出火、そして、なすすべもなく闇に飲まれる。

《船》のベッドでの目覚め。
リスポーンらしい。それともあれは夢だったか。
燃料を補充し、次の燃料も準備し、帆をあげ、一気に走り抜ける。
やった!逃げ切った!!
しかし、突然の衝撃と共に、《船》は真っ二つに割れる。

主人公の赤ずきんが呆然と突っ立っている。
それはプレイヤーである私だ。
火山からは離れたようだが、このままではしょうがない。
燃料が後部にあるが、分かれてしまった前部のENERGYタンクへ送ることはできない。
前部だけで進まなければいけないようだ。

風はない。
小さな赤ずきんはウインチを引っ張って《船》を連れていく。
やがて吹いてきた風をとらえて、小さくなった《船》は進む。
うまくバランスを取らないと、前のめりになって止まってしまう。
それに慣れた頃には、次第に空が晴れてくる。

ああ、初めての青空だ、と思う。
みるみるうちに、《船》の死骸、《船》、《船》、《船》。
海だ。
張り出た突堤の先に、点火台。

船から飛び降りて、訳もわからず夢中で拾った燃料をくべる。
燃え盛る火。
細く、しかししっかりと上る一筋の煙。

そうか、これは、狼煙だ……

水位は静かに上がっている。
青空が気づいた時には夕焼けになり、ゆっくりと暮れ、やがて夜になる。
水位はどこまで上がるのだろう。
ただの満潮なのか、それとも……
周囲に打ち上げられている《船》の死骸を見て、泣きそうになる。

星空も消え、長い時間をかけて、最後に残った火が闇へ包まれ、このゲームは終わる。

人が仲間をもとめることに、どんな躊躇も不要だ。
これほど長く、孤独な道程に船を進めなければならないのだから。
人は、終着地もわからぬままひたすら船を進め、一縷の望みを胸に狼煙をあげる。
そんなことを考えた。

ちなみに、エンドクレジットのあと本編が始められるのだが、
赤ずきんの生家に戻ってみたところ…
エモーショナルな事実に気がついた。
それは偶然か、それとも意思か。
しばらく考えてみたいと思う。

(了)

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