今日を纏う

猛者の巣窟、と呼ばれるこの無法地帯《クロスデルタ》にも高級なレストランはある。《ティアドロップス》もそのひとつだ。

「なぁイェヌス、私はスーツを持っていないんだが、となると、やはり軍服で行くべきかな……」
竜人のトゥバンは困り果てた顔で、ワニのように突き出た顎を撫でながら、クローゼットを眺めている。
「軍服なんてまだ持ってるの? ディナーの相手はメラクでしょ、普段着でいいんじゃないの」
「その彼女が気合い入ってるのさ。背中の空いたドレスに釣り合うものを考えてくれよ」

きっと、こんな時間が、今日という日を特別な日にするんだろう。
大人はいいな、楽しそうだ。

イェヌスはフフッと笑って、クローゼットを覗いた。

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