夜を掬う —宵闇の、溢れて朝[序章]—

2019-06-24

ここは東の最果て。切り立った断崖の遥か下に、白い波が現れては消える。この高さだけをみても、大昔、身投げの名所だったという話は理解できる。ましてや、満月の夜ならばその遺体は人魚に弔われるのだとか、波間に顔を出す海竜の餌食に(続きを読む)


2 ー マリア

2017-05-01

その運命の日、あたしは屋台村からみんなと反対方向へ逃げてから、誰よりも早く教会の裏口をくぐったの。 教会なんておせっかいなところ、ほんとは行きたくなかった(ママは敬虔なクリスチャンだったけれど、あたしはごめんだわ)。 で(続きを読む)


1 ー ラウル

2017-05-01

その頃、オレの生きる街ではしょっちゅう、大人たちが喧嘩をしていた。 例えばバスを待つ列。 例えば屋台のテーブル。 最初は、並び順だの肩がぶつかっただのオレにもわかるような因縁つけに始まって、そのうち「グォチンジェ(国慶節(続きを読む)