されど日々は過ぎて

2018-07-24

秘密を作った。 彼女が「ねぇ、」と切り出せば、それは誰にも《秘密》の《秘め事》なのだった。   僕が彼女と同じ会社にいるのはあと1ヶ月だから、こうして毎晩のように何処かへ出かけて《秘め事》をしたとしても、せいぜ(続きを読む)


大抵のことは愛でカタがつく。【2】匂い

2017-05-01

「例えば?」 僕はグラスを磨きながらセツに尋ねた。 彼はカウンターに座って、いつものように頬杖をつき、左手の爪を眺めながら答えた。 「玉」 「ほう、ほう、なるほど。理解した。じゃあね、……ま、ま、ま……卍固め」 「普通に(続きを読む)


踏み出すのは足、繋がるのは… 【後編】

2017-05-01

祭りの会場から離れても、商店街には紅白の提灯が並んでいる。 マコは田端と歩きながら、そこに書かれた店や会社の名前を、一つずつ眺めていった。 「どうして赤と白はめでたいのかしら」 「さあね……赤なんて、どう考えても血の色だ(続きを読む)


踏み出すのは足、繋がるのは…【前編】

2017-05-01

駅前マンションのエントランスから出てきたマコは、通りの祭囃子にため息をついて、もうすぐ夫となる人の手を握りなおした。 彼はマコの不機嫌そうな顔に気づき、背を丸めて覗きこむ。 「どうしたのマコちゃん?」 自分の長いウェーブ(続きを読む)