保護中: 【閲覧終了】あなたとわたしをつなぐ本 -赤- 1話目

2019-11-10

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青い夢を見た

2019-10-05

四畳半の、その部屋の壁はクッションで覆われている。私はモモンガスーツを着て、VRゴーグルを装着した。 スイッチを入れると、VR世界のスポーン地点である、かつて地上にあったという『シブヤ』の『スクランブルコウサテン』にいる(続きを読む)


若輩教祖の論理学

2019-09-07

『世界は丸い玉の上に乗った盤』 それがウチの教義。 色も大きさも質量も異なる石を上手く配置することで、この世界の平衡は保たれる。そのバランスを見極め、配置するのが僕の役目。 今日も人々がやって来る。 「教祖さま、お話した(続きを読む)


勇者ものがたり

2019-08-03

僕は勇者だ。 村を焼いた魔王を倒すため、北へ向かって旅に出た。 「あっ、オオカミだ!」 唸りを上げるオオカミに剣を振り上げ、叩き斬る。 経験値がひとつ上がった。 僕は森を抜け、砂漠をゆく。 突然、遺跡のレンガが人型に積み(続きを読む)


シリーズ『あなたとわたしをつなぐ本』

2019-06-30

わたしの書く物語は、わたしが必要としているから書いている。 と同時にそれは、誰かにとっても必要な物語であるかもしれない。   テーマは《色》。 1つの色につき三部だけ作ります。 一部はお買い上げいただいたあなた(続きを読む)


夜を掬う —宵闇の、溢れて朝[序章]—

2019-06-24

ここは東の最果て。切り立った断崖の遥か下に、白い波が現れては消える。この高さだけをみても、大昔、身投げの名所だったという話は理解できる。ましてや、満月の夜ならばその遺体は人魚に弔われるのだとか、波間に顔を出す海竜の餌食に(続きを読む)


嵐の日の猫

2019-05-29

クロイネはメスの黒猫だ。ピンと立てた耳は大きめで、ほっそりした顔立ちをやや幼く見せている。いつもこじんまりと座り、ゆっくりと、長い睫毛で瞬きする。 「ミャーオゥ」 高く掠れた声で鳴き、首をひねってわたしを見る。 ぽつ、ぽ(続きを読む)


ホメオスタシス

2019-04-14

現代文の授業中、先生に指名された真由は『こころ』の一文を読みながら、ふらふらと歩き出した。 先生の制止も聞こえない様子で、教科書を投げ捨て、最後の2、3歩は走るようにして、窓から身を投げた。 私たちはみんな、ただ呆然と彼(続きを読む)


麗らかな春の10歳

2019-04-06

「ねえおかあさん見て!玄関にツバメが来たよ!巣作りするかな?ひな生まれるかなあ?あーダンボールとか下に敷いた方がいい?落ちたら大変だよね!!」 「気が早いわよ」 「だよねえ」 咲(さき)と名付けた娘は、願いどおりよく笑う(続きを読む)


《bar ティアドロップス》

2019-03-02

そこは、駅から10分の裏路地。 《bar ティアドロップス》 今にも力尽きそうな古い看板と、年季の入った木製のドア。 これまでに何度も、立ち止まって看板だけ眺めては踵を返す、ということが続いている。 「…まあいいや。どう(続きを読む)