八朔さんの事

2018-11-20

作家にありがちな、文友とのエピソードをネタにしたエッセイのタイトルをつけてみたかった。 それだけです。 でもせっかくだから、ちょっと書いてみましょう。 菊屋八朔氏(@kikuya_log)とは、たぶん7年前ぐらいに知り合(続きを読む)


食すれど – 狐火の唄 –

2018-10-06

ここは櫻乃郷、竜の墓場。 死にかけの竜が墜ちてくる。 女狐が、小さな家に住んでいる。 怪我した猟師と、住んでいる。 「竜が堕ちると、そなたはなぜ泣くのだ」 「わかりません…悲しいわけではないのです、縁もゆかりもない竜です(続きを読む)


近況とか、予定とか

2018-09-30

9月も月末です。 やっと夏休みの宿題、終わりました。 7月に参加希望を出した、アンソロジーの原稿を書き上げました。 締め切りは明日です。 正確に言うと、まだ確定稿じゃありません。 でももう、ほぼこのままだと思います。 ア(続きを読む)


さよならの黄昏

2018-09-01

日課のようだった夕立がいつのまにか無くなって、帰宅の電車内から見える夕焼けは、透明感を増していた。 ムッとする暑さで実感はないが、もう秋なんだろう。 夏は終わった。 これから全てが眠りに向かう。 そう思うと、心なしか乗客(続きを読む)


いつかの夜

2018-08-03

僕に帰る場所などないことを知っていて、君は訊ねたんだ。 「いつまでここに居るの?」 「ずっとさ」 「ずっと……?」 そう言うと彼は、ケタケタと笑い転げた。 彼は僕のクローンだから、僕がずっとここに居ると同じ顔が二人で暮ら(続きを読む)


火星生まれ、温室育ち

2018-07-29

「お兄ちゃんのバカ!あたしだってスパー…スパーゲッティー?ぐらいできるもん!!」 「なんだよ!作れるならやってみろ!!」 妹はフライパンを投げた。 くるくると回って飛んでくるそれを僕は避けた。 フライパンは回り続けて運良(続きを読む)


されど日々は過ぎて

2018-07-24

秘密を作った。 彼女が「ねぇ、」と切り出せば、それは誰にも《秘密》の《秘め事》なのだった。   僕が彼女と同じ会社にいるのはあと1ヶ月だから、こうして毎晩のように何処かへ出かけて《秘め事》をしたとしても、せいぜ(続きを読む)


添いとげる理由

2018-07-07

「ねえ、約束覚えてる?」 妻が言った。 「……ああ、覚えてるよ」 「若かったわ」 「後悔、してるのか?」 「……愛してるわ」 妻は目を伏せた。 「僕だって愛してるさ、だからこの家を買った、50年もローン組んで」 彼女は首(続きを読む)


よくある光景

2018-04-07

食卓越しの二人の顔は、渋かった。 「父さんは反対だ。人間界なんて、そんな野蛮で危険な!」 それを制するように、母は私へ訊いた。 「どうしても、行きたいのね」 私は頷く。 「海の生活が嫌いなわけじゃないの、でも、ずっと陸で(続きを読む)


夜明けの軋み 5話 春ふたたび、玉蘭

2018-03-04

ふと、理人が顔を上げて呟いた。 「桜はまだ咲きませんね」 彼は日当たりの良い廊下で、本を読んでいた。 淹れた緑茶を彼に差し出しながら、小夜子は長いスカートの中で足を崩す。 「今は玉蘭かしら」 「ギョクラン……」 「白木蓮(続きを読む)