ふと、理人が顔を上げて呟いた。 「桜はまだ咲きませんね」 彼は日当たりの良い廊下で、本を読んでいた。 淹れた緑茶を彼に差し出しながら、小夜子は長いスカートの中で足を崩す。 「今は玉蘭かしら」 「ギョク…
さらに表示 夜明けの軋み 5話 春ふたたび、玉蘭タグ: 異種婚
夜明けの軋み 4話 冬、梅
大晦日に降りだした大雪が、外出をためらわせていた。 高台に建つこの家からは、雪に覆われた紅が丘が一望できる。 サニータウンにはまだちらほらと空き地もあるはずなのだが、雪は全てを隠している。 年が明け、…
さらに表示 夜明けの軋み 4話 冬、梅夜明けの軋み 3話 秋、鬼灯
「浴衣って、意外と暑いでしょう?本当はもう少し涼しくなってからの方が着やすいんですけど」 夕方といえど、まだ外は明るく、蒸し暑い。 この和室も、風が抜けるとはいっても吹き抜けるのは熱風、部屋が涼しくな…
さらに表示 夜明けの軋み 3話 秋、鬼灯夜明けの軋み 2話 夏、カンナ
受付の混雑がひと段落して、小夜子はふう、と息をついた。 左手をひねって腕時計を見る。12時18分。昼休みの時間をとっくに過ぎている。 売店からパンでも買ってこようか、いつも空いてるうどん屋へ行こうか。…
さらに表示 夜明けの軋み 2話 夏、カンナ夜明けの軋み 1話 春、桜
【幻界ゲート】の発見と幻族の流入は、世界を騒然とさせた。 国や地域によっては排斥運動や虐殺まで行われたという。 しかし、日本では時の政府が、少子化問題の切り札として、いち早く幻界融和の政策を打ち出して…
さらに表示 夜明けの軋み 1話 春、桜狐姐さんと竜猟師【狐火の唄】
文字書きが作品に絵をつけてもらえるというのは、この上なく幸せなことであります。
さらに表示 狐姐さんと竜猟師【狐火の唄】狐火の唄
或る山深い峡谷に、春の一ヶ月だけ、陽のあたる谷があった。一ヶ月、芽吹き花咲くうちにも桜が最も優美なので、『櫻乃郷』と呼ばれていた。 深く険しい山の中、そこに踏み入る人間は道に迷った猟師だけ。麓の村では…
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