インフルエンザ・ウィズ・ヴァンパイア

2019-02-02

「理人さん!お返事、できますか…!」 小夜子は居間に横たわる理人の耳元で声をかける。 彼はうっすらと目を開けた。 「ああ! いま救急車を呼ぼうかと」 「…大丈夫、ですよ」 「さっき飲んだお薬、人間用だったんです! あそこ(続きを読む)


わたしのペンは何を救うのか

2019-01-31

「『救う』という態度は傲慢だ」 と言われたことがある。 そこに上下関係・強者と弱者を読み取れば、確かに傲慢さを感じなくはない。 それに続いて、 「『寄り添う』が対等だ」 と言う。 『寄り添う』だけで解決する問題はある。 (続きを読む)


ハレノヒ(白のブルース)

2019-01-20

今日は旧世界でいうところの大晦日。 昼から降り始めた雪が積もり、客足は例年より少なかった。 今年最後にメラクを指名した客は、竜人への偏見厳しい老いた浮浪者であった。 世界が『こう』なってしまったのは奴等の所為だとか、キメ(続きを読む)


【感想】フワつく身体 作:すと世界【小説】

2019-01-05

最初にこの作品と出会ったのは……まさしく『出会い』だったのだけれど、2017年11月の文学フリマ東京だった。 初めて一般参加した私は、「無料配布でーす」の声に弱かった。 あちらこちらで頂いたチラシや小冊子。 《フワつく身(続きを読む)


追われるように、年越。

2019-01-01

2019年、暦の上で新年です。 10月あたりから、公私ともにイベント目白押しで、 このサイトの更新もままなりませんでした。 まずは昨年の総括から。 ----- 2018年は創作と頒布の年でした。 ちょうど一年前、元旦のツ(続きを読む)


八朔さんの事

2018-11-20

作家にありがちな、文友とのエピソードをネタにしたエッセイのタイトルをつけてみたかった。 それだけです。 でもせっかくだから、ちょっと書いてみましょう。 菊屋八朔氏(@kikuya_log)とは、たぶん7年前ぐらいに知り合(続きを読む)


食すれど – 狐火の唄 –

2018-10-06

ここは櫻乃郷、竜の墓場。 死にかけの竜が墜ちてくる。 女狐が、小さな家に住んでいる。 怪我した猟師と、住んでいる。 「竜が堕ちると、そなたはなぜ泣くのだ」 「わかりません…悲しいわけではないのです、縁もゆかりもない竜です(続きを読む)


近況とか、予定とか

2018-09-30

9月も月末です。 やっと夏休みの宿題、終わりました。 7月に参加希望を出した、アンソロジーの原稿を書き上げました。 締め切りは明日です。 正確に言うと、まだ確定稿じゃありません。 でももう、ほぼこのままだと思います。 ア(続きを読む)


さよならの黄昏

2018-09-01

日課のようだった夕立がいつのまにか無くなって、帰宅の電車内から見える夕焼けは、透明感を増していた。 ムッとする暑さで実感はないが、もう秋なんだろう。 夏は終わった。 これから全てが眠りに向かう。 そう思うと、心なしか乗客(続きを読む)


いつかの夜

2018-08-03

僕に帰る場所などないことを知っていて、君は訊ねたんだ。 「いつまでここに居るの?」 「ずっとさ」 「ずっと……?」 そう言うと彼は、ケタケタと笑い転げた。 彼は僕のクローンだから、僕がずっとここに居ると同じ顔が二人で暮ら(続きを読む)