魔捜課は直行直帰です!!〜赤提灯編〜

2018-03-04

「だからあ、武井さんはどぉんな女性が好みなんですか!ってきいてんのぉオレはァ!!」 「飲み過ぎじゃないのか」 「でえじょぶす!!おやじさあん、ちくわぶとばくだんちょうだい!」 瓶ビール一本で楽しそうだな、と武井は穂村を眺(続きを読む)


とめどなく。

2018-03-03

早くしないと、電車が来てしまう。 ねえさま、とわたしは言って、前を歩く制服の腕をつかんだ。 長い髪が私の手をくすぐった。 「ねえさまは、わたしが純血のエルフでなくても……愛してくれたの?」 ねえさまは振り向いて、少し驚い(続きを読む)


農耕貴族 ヴァンパイア鈴木さん

2018-02-03

視望山の麓で野菜作りに精を出す、ヴァンパイアの鈴木さん。 幻界から日本へ移住し、人の生気を吸うことをやめ、農業を始めて8年になる。 産地直売の野菜は、食べると元気が出ると評判だ。 「野菜づくりのコツ? 我は夜にしか畑に出(続きを読む)


大抵のことは愛でカタがつく。【4】BL

2017-12-04

「ポーズ集のモデル?」 「そう。あ、裸ね」 僕はメガネをずり上げた。 「いいんですか、僕、がりがりですけど」 サブカル系出版社に勤めるタカヤさんは、手を振って、ビアグラスをあおった。 「いいのいいの!セッちゃんがカワイイ(続きを読む)


まえの学校の友だち

2017-12-02

ぼくは大イチョウの木の大きなウロの前へ立った。 いつものように、幻界に残ったあの子との交換日記をウロの中にしまう。 手早く地面に魔法陣を書いた。転移魔法陣はもう、目をつぶっていても書ける。 右手をかざして呪文をとなえる。(続きを読む)


タンデム・パラレル・センチメンタルな夜

2017-11-21

#1 アパートに帰って、もう一時間になる。 その間、エアコンはフル稼働して、私の部屋は熱帯から温帯にまで涼しくなった。 もうエアコンを止めて窓を開け、シルフの出入りを待っても良いのだけれど、動けずにいる。 仕事のスーツの(続きを読む)


星回廊、にて。

2017-10-07

燈籠町で最近人気なのが『星回廊』という名の和食店。 水路にせり出したデッキの上で、星を眺めながら食事を楽しむことができるのだ。 理人と小夜子もまた、夜空と、時折水路に現れる水の精霊《ウンディーネ》たちを眺めながら、懐石を(続きを読む)


大抵のことは愛でカタがつく。【2】匂い

2017-05-01

「例えば?」 僕はグラスを磨きながらセツに尋ねた。 彼はカウンターに座って、いつものように頬杖をつき、左手の爪を眺めながら答えた。 「玉」 「ほう、ほう、なるほど。理解した。じゃあね、……ま、ま、ま……卍固め」 「普通に(続きを読む)


無題

2017-05-01

あっ、と思った時には、すでに遅かった。 俺の古ぼけた革靴の下で、蜂は潰れていた。 長い手足をかすかに動かしてはいるが、臓物をさらけ出してはさすがに生きていられまい。 なんてこった。 日当たりの良い喫茶店の、窓際のこの席に(続きを読む)


夏の夜に寄せて

2017-05-01

だから明日は台風が来るっていう夜に給食室の壁によじのぼったりできるのよ。 「なんか言った?」 「ううん、何にも」 この人の好きなものはあたしの好きなもの、この人のしたいことはあたしのしたいこと。 あたしの真ん中のどーんっ(続きを読む)